講演会
「醸造の革新：日本酒による伝統と地域社会の再構築」
講師：岸 保行 准教授

伝統と革新の融合─日本酒醸造の未来を探る

2024年12月、ユネスコにより「日本の伝統的な酒造り」が世界無形文化遺産として正式に認定されました。これを記念し、国際交流基金ベトナム日本文化交流センターは、「醸造の革新：日本酒による伝統と地域社会の再構築」と題した講演会を開催します。本講演では、新潟大学日本酒学センター・副センター長である岸保行准教授よりお話を伺います。

日本の酒造りの歴史は1,000年以上にわたり、神社や寺院の儀式として始まり、次第に日本文化の重要な要素へと発展してきました。長い年月をかけて磨かれた伝統的な醸造技術は、職人の技と米や水といった地域特有の素材に支えられています。日本酒造りは地域のアイデンティティと深く結びついており、その文化的・歴史的価値がユネスコによって評価されたことで、伝統技術の継承と保護の重要性が改めて強調されています。同時に、日本酒は国際的な評価を高め、世界市場や高級レストランに浸透しつつあります。この需要の拡大は、新たなビジネス機会を生み出し、日本文化の発信にも貢献しています。

一方で、日本酒業界は課題にも直面しています。酒造りの熟練技術者である杜氏の数は減少し、多くの地域の酒蔵が経済的な圧力や消費者の嗜好の変化により存続の危機に直面しつつあります。伝統技術の継承が困難になりつつある中、日本酒本来のアイデンティティを維持することへの期待も高まっています。

本講演では、岸准教授が「伝統と革新」をテーマに、日本酒産業を例とする伝統文化の保全と発展について考察します。新潟県という代表的な酒造地域を事例に、伝統技術の継承や業界の課題に対する取り組みを紹介し、日本酒の文化的価値を守りながら、持続可能な産業として発展させる道を探ります。

イベント情報

• 言語: 英語（ベトナム語翻訳付き）
• 対象：13歳以上の方

■ Credit:
主催: 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
共催：AEON MALL Long Bien
協力: 在ホーチミン日本国総領事館、 KOHNAN JAPAN

講師情報

岸保行（きし・やすゆき）　

1979年 東京都生まれ。

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士課程修了。早稲田大学助手、東京大学経済学研究科ものづくり経営研究センター特任助教を経て、2012年より新潟大学経済学部准教授に着任。2018年からは新潟大学日本酒学センター・副センター長を兼務。

専門は酒蔵組織論、伝統産業の海外展開、伝統と革新。産官学が連携した総合科学としての「日本酒学（Sakeology）」を考案し、新潟大学日本酒学センター開設の中心的な役割を担ってきた。現在は、新潟大学発の「日本酒学」を世界的な学問分野として確立することを目指して研究・教育活動をおこなっている。

主な研究実績

・Reviving tradition-bound products: a case of value co-creation using rhetorical history (2022)

・「地域に宿るダイナミック・ケイパビリティ : 山形県酒造組合による「GI山形」の取得過程と地域の変容」(2022)

・新型コロナウイルス禍の影響による企業経営と経営者の意識調査 : 新潟県と富山県の中小企業アンケート調査結果報告 (笠原哲也准教授 追悼号)(2021)

・日本酒の経験価値マーケティング : 「吉乃川カヨイ」の伝統的慣習の再興をケースとして (笠原哲也准教授 追悼号) (2021)

・「淡麗辛口」の誕生 : “オール新潟路線”が生み出した新潟清酒のアイデンティティ (笠原哲也准教授 追悼号) (2021)

■問合せ:
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大須賀 (070-513-7550) / Anh (083-369-1818)
国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
27 Quang Trung, Hoan Kiem, Hanoi, Vietnam
TEL: 024-3944-7419