国際交流基金が1973年以来実施する「国際交流基金賞」の2021年度の受賞者が決定しました。本賞は、学術や芸術等のさまざまな文化活動を通じて、日本と海外の相互理解促進に顕著な貢献があり、引き続き活躍が期待される個人または団体に対して授与しています。第48回となる今年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により中止となった昨年度の推薦分を含めた101件から、有識者による審査を経て以下の4件を決定しました。
♥ 是枝裕和(映画監督)[日本]
♥ 宮田まゆみ(笙奏者)[日本]
♥ ハノイ国家大学外国語大学日本言語文化学部 / ハノイ貿易大学日本語学部 /ハノイ大学日本語学部[ベトナム]
♥ イルメラ・日地谷=キルシュネライト(ベルリン自由大学教授)[ドイツ]
ベトナムからは初めて、日本語教育分野での多大な貢献を認められ、ハノイ国家大学外国語大学日本言語文化学部・ハノイ貿易大学日本語学部・ハノイ大学日本語学部が受賞することとなりました。
◆ハノイ国家大学外国語大学日本言語文化学部・ハノイ貿易大学日本語学部・ハノイ大学日本語学部の授賞理由
ベトナムにおける近年の日本語教育の発展には、目を見張るものがある。国際交流基金の 2018 年度日本語教育機関調査によると、学習者数で世界第 6 位であり、3年前の2015年度調査と比べると2.7 倍、機関数では 3.7倍の伸びを見せており、学習者の増加数は世界一であった。また、日本語能力試験(JLPT)の受験者数は、初めて実施された 1996年には 319人であったが、22年後の2018年には69,843人となり、219倍の急拡大を遂げ ている。
これらの発展の背景には、良好な日越関係の下での日本との経済交流、文化交流の拡大、それに伴う日系企業 の進出や日本での就職の機会の増加等があり、そのことが、最近の初等・中等教育における第一外国語としての日本 語教育の開始をはじめとした制度の再整備等によい影響をもたらしている。
このような発展の礎となってきたのが、今回の授賞対象であるハノイ国家大学外国語大学、ハノイ貿易大学、ハノイ 大学(旧ハノイ外国語大学)の三校である。ハノイ貿易大学では、1961 年に日本語教育を開始、経済、外交・行 政分野の人材を育成してきた。その後、1973 年に開始したハノイ大学では通訳・翻訳分野を中心に有為な人材を 輩出し、2010 年には日本語専攻の修士課程を設置している。さらに 1992 年日本語教育を開始したハノイ国家大 学外国語大学はベトナム唯一の初等・中等の正規教師を養成できる日本語教師養成コースを有し、2009 年にベト ナムで最初の修士課程を設置している。三校が育んだ優秀な人材は、年月をかけて日越両国間の強い絆を創り上げ てきた。同時に、連携してベトナムの初等・中等教育における日本語教育の拡大に貢献してきた。
さらに、日本語教育の機運が高まった 2017 年、これらの三校が協力してイニシアティブをとり、全国の日本語教育 実施大学等と協議しベトナム初の全国組織である「ベトナム日本語・日本語教育学会」の発足を現実のものとし、ホ ーチミン市やフエ市で学会主催のワークショップを開催し、活発な学会活動を展開している。 このように長年にわたりベトナムにおける日本語教育を支え、優秀な人材育成、国際相互理解の促進に貢献してき ており、その業績は国際交流基金賞にふさわしい。
国際交流基金賞について、詳しくはこちら:https://www.jpf.go.jp/j/about/award/index.html(日本語)