国際交流基金ベトナム日本文化交流センターは、ベトナム人キュレーター企画のアートプロジェクトに対し、日本の建築家、キュレーター、アーティストを派遣し、交流とノウハウの紹介を通じてベトナム現代アートの活性化を目指すプロジェクト「スカイラインズ・ウィズ・フライング・ピープル」(英語タイトル「Skylines With Flying People」)を開催いたします。
美術教育、公立・私立美術館、現代アートギャラリー、オルタナティブスペース、(ベトナム政府関係機関を含む)助成団 体、キュレーター・学芸員、美術運送・設営会社など、現代アートを取り巻くインフラが発展途上にあるベトナムにおいて、現代アートの企画を立案し実現させ ることは極めて困難な状況にあります。
そのような環境のなか、2011年に福岡アジア美術館の招へいで日本に滞在したグエン・フオン・リン氏(アーティスト/キュレーター)が日本で得た知見とネットワークを元に本事業を企画。当センターの資金協力・施設提供を受け、プロジェクトが始動しました。
日本の建築家(野田恒雄氏)による「場」の改装から始まり、ベトナム人アーティストを中心に約10名が当センターの施設内に作られたスタジオで「オープン・スタジオ」を実施、複数の展覧会開催を経て、最後に「オープン・スタジオ」で制作した作品を発表します。
ま た、アーティストトークやパフォーマンス、「東北九州プロジェクト」のプロダクト展示など、関連事業も盛り沢山。日本とベトナムの現代アート関係者が約 1ヶ月にわたって交流を行う本事業は、ベトナム初の本格的な現代アートの交流事業として、大きな注目を集めるものと期待されます
■ 概要
【会期】 2012年12月4日(火)~2013年1月6日(日)
【会場】 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター(27 Quang Trung, Hoan Kiem, Hanoi)
【主催】 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
【共催】 ニャーサン・スタジオ
【助成】 プリンス・クラウス基金
【協力】 ゲーテインステテュート・ハノイ/紺屋2023/東北九州プロジェクト
キュレーター | グエン・フオン・リン(Nguyen Phuong Linh) | |
タイトルロゴ | グエン・マイン・ドゥック(Nguyen Manh Duc) | |
ロゴデザイン | グエン・マイン・フン(Nguyen Manh Hung) | |
空間&スタジオデザイン | 野田恒雄(no+d.a) | |
(アシスタント)上ノ薗正人 (no+d.a) | ||
参加アーティスト | トゥアン・マミ(Tuan Mami) | ベトナム |
(フライング・ピープル) | グエン・チャン・ナム(Nguyen Tran Nam) | ベトナム |
グエン・フイ・アン(Nguyen Huy An) | ベトナム | |
アペンディックス(Appendix) | ベトナム | |
ライ・ジエウ・ハー(Lai Dieu Ha) | ベトナム | |
グエン・クオック・タイン(Nguyen Quoc Thanh) | ベトナム | |
グエン・チン・ティー(Nguyen Trinh Thi) | ベトナム | |
グエン・ホン・ゴック(Nguyen Hong Ngoc) | ベトナム | |
田村友一郎 | 日本 | |
宮田君平 | 日本 | |
服部浩之 | 日本 | |
ジェイミー・マックストン=グラハム | 米国 | |
(Jamie Maxtone-Graham) |
ゲストスピーカー&協力者:
グエン・マイン・ドック(Nguyen Manh Duc) | ニャーサン・スタジオ創立者 | ベトナム |
メー・ルオン(Me Luong) | ニャーサン・スタジオ創立者 | ベトナム |
チャン・ルオン(Trang Luong) | インディペンデント・キュレーター | ベトナム |
グエン・ホン・ハイ(Nguyen Hong Hai) | アーティスト | ベトナム |
チャン・トゥー・ハン(Tran Thu Hang) | アーティスト | ベトナム |
リチャード・ストレイトマター・チャン(Richard Streitmatter Tran) | ベトナム | |
霜田誠二 | 詩人/NIPAF代表 | 日本 |
ヴィエット・レー(Viet Le) | インディペンデント・キュレーター | 米国 |
Jayeong Park | Work on Workキュレーター | 韓国 |
Hyejin Jang | Work on Workキュレーター | 韓国 |
スザンナ・フッセ(Susanne Husse) | District Berlinキュレーター | ドイツ |
キュレーターからのメッセージは、こちら。
各アーティストのプロフィールはこちら。
■各プロジェクト・イベント案内
【留意事項】
改装された床には溝のある木製パレットが敷かれているため、ハイヒールでご来場の際には、ヒールが溝に挟まってしまう恐れがありますので、十分、ご留意いただくよう、お願い申し上げます。
1. 場の改装
期間 2012年11月20日(火)~11月30日(金)
場所 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター (27 Quang Trung, Hoan Kiem)
野田恒雄氏(建築家/no+d.a代表)がキュレーター及び各アーティストの要望を聞きながら、限られた予算と時間のなかでベトナム日本文化交流センターの敷地内に交流の「場」となるプラットフォームと各アーティストのためのスタジオを構築します。野田氏が選んだ中心素材は、木製パレット。不揃いな規格に苦戦しつつ、独自の「場」づくりに挑戦します。
2. オープン・スカイラインズ
日時 2012年12月4日(火) 18:00~
場所 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター (27 Quang Trung, Hoan Kiem)
「オープン・スカイラインズ」は、本事業全体を紹介するための記者会見&一般開放です。主催者及び主要関係者による趣旨説明の後、各スタジオを紹介(スタジオツアー)いたします。
3. オープン・スタジオ
会期 2012年12月5日(水)~12月21日(金)
営業時間 10:00~22:00 (会期中無休)
場所 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター (27 Quang Trung, Hoan Kiem)
各参加アーティストが、それぞれのスタジオに滞在し、過去の作品を展示するとともに、新たな作品づくりに挑戦します。会期中、来場者は、自由に各アーティストと交流し、「work-in-progress」(制作の過程)にある作品の見学や意見交換を行うことができます。
以下に各スタジオと施設をご紹介します。
情報センター
ここは、来場者が立ち寄って休憩したり、各アーティストが全体日程を確認したり、飲食をしたりすることができるコモンルーム、ライ・ジエウ・ハー、グエン・クオック・タイン、チャン・トゥ・ハーの作品が展示されたショールーム、「東北九州プロジェクト」(※)の協力で実現した東北出身クリエーターのプロダクトの展示・販売ブースから構成されています。
※東北九州プロジェクトは、東日本大震災への復興支援プロジェクトです。震災によって減少してしまったアーティストやデザイナーの仕事創出を目的とし、東北で活動するアーティスト・デザイナーの作品を九州各都市で紹介・販売し、併せて各会場において、東北文化関係者によるトークイベントを開催しました。今回は、そのなかの数点が展示・販売される予定です。
MAC (Mami Art Center/マミ・アート・センター) ハノイ
トゥアン・マミ、服部浩之により運営される即席オルタナティブスペース。日々地元アーティストや面白い活動を実践している人物を招いて、トークイベントやインタビュー、ディスカッションを、食事などをとりながらゆっくりとコミュニケーションを深めつつ繰り広げ、それを映像や文字で記録していきます。また同時に、日本で現在アクティブに活動している実験的な「場」を積極的に紹介します。
メディア・ラボ
映像と写真に関わるグエン・チン・ティ、ジャミイ・マックストン=グラハム、田村友一郎の共同スタジオ。来場者を撮影しながらビデオ・写真の編集過程を見せていきます。また、以下の映像作品・写真スライド作品を上映します。
-グエン・チン・ティ『無字幕』(Unsubtitled)(2010)
-ジェイミー・マックストン=グラハム『横になる』(Laying Down)(2012)
-田村友一郎『世界は連続的か否か』(The world is continuous or not)(2012)
ミニシアター
パフォーマンスを実践するアーティスト集団「アペンディックス」の仮設小屋。過去のパフォーマンスを映像作品として上映するとともに、新たなパフォーマンスを、日々、仮設小屋界隈で実験しながら創り上げていきます。
ファミリー・キッチン
ベトナム美術大学4年生にしてアーティストのグエン・ホン・ゴックの料理スタジオ。毎日、選ばれた来場者をスタジオに招待し、料理を振舞うパフォーマンスを実践します。
裁縫ファクトリー
ライ・ジエウ・ハーとグエン・クオック・タインの共同スタジオ。ライ・ジエウ・ハーは死を想起させる純白のドレスを、グエン・クオック・タインは軍服を縫製し、インスタレーション作品として完成させることを目指します。
モバイルギャラリー「エスケープ」
三輪バイクの荷台をギャラリーに見立てたグエン・チャン・ナムのスタジオ。過去の映像作品を荷台で上映しつつ、時に駐輪されたまま、時にハノイの街を走りながら、新たな映像作品づくりに挑戦します。
体操競技場
会場の中庭の一角に設けられた宮田君平のための競技場。ハノイで跳び箱を作成し、毎日、一段、一段、積み重ねていきながら、跳び箱を飛ぶパフォーマンスを行います。
4. 展覧会
展覧会1 世界をハカル(Measuring the World)
出展作家: | 田村友一郎、宮田君平、グエン・フイ・アン |
オープニング: | 2012年12月11日(火)18:00~ (アーティストトーク有り) |
会期: | 2012年12月12日(水)~2013年1月6日(日) |
営業時間: | 09:00~18:00 (会期中無休) |
会場: | ベトナム日本文化交流センター展示ホール (27 Quang Trung, Hoan Kiem) |
3名の出展作家は、それぞれ異なる媒体と素材を利用していますが、各作家とも、自身の尺度で世界を測定し、そこで得られた認識をもとに世界を捉えなおそうと試みる行為に共通性が見られます。
グエン・フイ・アンは、ハノイ最高層ビルの高さを紙切れで測り、その高さ分の紙切れを使って、本展のための新作として、シンプルな造形物を創り上げます。
宮田君平は、自身の眼と身体そのものを使って世界の距離感を捉えなおす試みを実践しています。2010年10月31日、スウェーデンのルレオを目指して福岡の自宅を出発。出発する際にルレオ在住の友人に「今から遊びに行きます」と一言、電話。それから1ヶ月以上が経過した2010年12月3日、飛行機に一切乗らずに18ヵ国を通過して無事、ルレオに到着。その旅程をビデオインスタレーションとして発表した『遅れてごめんなさい』(I’m sorry for late)(2010)を展示します。
田村友一郎は、逆に、自身は移動も撮影もせずに、インターネットで利用可能な「グーグル・ストリート・ビュー」の画像のみをつなぎ合わせて世界の映像を作り出します。今回の展覧会では、その試みで文化庁メディア芸術祭優秀賞ほかを受賞した『NIGHTLESS』(2010)を上映します。
本展覧会が、身の回りの世界のスケール感を見つめなおすきっかけとなればと願っています。
展覧会II: ユートピア(UTOPIA)
出展作家: | トゥアン・マミ |
オープニング: | 2012年12月11日(火)18:00~ (アーティストトーク有り) |
会期 : | 2012年12月12日(水)~2013年1月6日(日) |
営業時間: | 09:30~11:30/12:30~18:00 (日曜日及び12/29~1/3まで休館) |
会場: | ベトナム日本文化交流センター図書館(27 Quang Trung, Hoan Kiem) |
2010年に東京ワンダーサイトに滞在したトゥアン・マミによる新作インスタレーション展。ベトナム日本文化交流センター図書館の床一面に米粒を敷き詰め、それをガラス板で覆います。
来館者が往来する図書館の床一面に米粒を敷くという美しくも困難なインスタレーション。ガラス板を隔てて来館者に踏みつけられる米粒は、水も土も得られない過酷な環境のなかでも、展覧会の会期中、少しずつ育っていきます。逆境のなかで育つ米粒に、皮肉にも、自由を感じるかもしれない。そして、手で米粒に触れたくなるかもしれない。しかし、ガラス板で隔てられた米粒は、近くて遠く、手の届かないところにある―。彼の近年の代表作「触れられないパラダイス」(Untouched Paradise)シリーズの一環として制作されます。
展覧会III: フライング・スカイラインズ~オープンスタジオ最終日・終わりの始まり~
FLYING SKYLINES – The Final Day (the beginning of the ending) at Open Studio
発表者: |
トゥアン・マミ、服部浩之、グエン・チン・ティ、ジェイミー・マックストン=グラハム、 |
オープニング: | 2012年12月21日(金)18:00~ |
会期 : | 2012年12月22日(土)~2013年1月6日(日) |
営業時間: | 09:00~18:00 (12/29~1/3まで休館) |
会場 : | ベトナム日本文化交流センター (27 Quang Trung, Hoan Kiem) |
オープン・スカイラインズ同様、重要なイベントであるフライング・スカイラインズでは、各アーティスト・写真家・キュレーターが、約3週間スタジオに滞在した成果を展示、パフォーマンス、アーカイブ等の形で発表します。
5. パフォーマンス
『しがみつく雑種』(Clinging Hybrid)
パフォーマー: | ライ・ジエウ・ハー |
日時 : | 2012年12月18日(火)18:00~ |
会場 : | ゲーテインスティテュート・ハノイ (56-58 Nguyen Thai Hoc, Hanoi) |
ベトナムで最もエネルギッシュな女性パフォーマーのライ・ジエウ・ハーが、ゲーテインスティテュート・ハノイの中庭に白づくめの空間を構成し、混沌と静寂、満たされた気持ちと哀しみ、活気と虚弱、刹那と永遠が共存する世界を表現します。特にパフォーマンスアートに対する検閲の厳しいベトナムにおいて、常に勇敢に、直接に、女性のアイデンティティとセクシュアリティを身体で表現しつづけるライ・ジエウ・ハーの、新作パフォーマンスです。
6. 連続トーク
現代アートに関する様々なトピック、特に「場」をとりまく問題・課題について、各国からの参加者が経験を交えながら語ります。
【第1日目】
日時 2012年12月5日(水) 18:00~
会場 ベトナム日本文化交流センター (27 Quang Trung, Hoan Kiem)
言語 ベトナム語
発表者
グエン・フオン・リン(Nguyen Phuong Linh)
グエン・マイン・ドゥック(Nguyen Manh Duc)
グエン・チン・ティ(Nguyen Trinh Thi)
グエン・フイ・アン(Nguyen Huy An)
アペンディックス(Appendix)
【第2日目】
日時 2012年12月6日(木) 18:00~
会場 ベトナム日本文化交流センター (27 Quang Trung, Hoan Kiem)
言語 英語+ベトナム語逐語訳
発表者
服部浩之
トゥアン・マミ(Tuan Mami)
スザンナ・フッセ(Susanne Husse)
チャン・ルオン(Tran Luong)
【第3日目】
日時 2012年12月7日(金) 18:00~
会場 ベトナム日本文化交流センター (27 Quang Trung, Hoan Kiem)
言語 英語+ベトナム語逐語訳
発表者
宮田君平
田村友一郎
Jayeong Park
Hyejin Jang
■ 問い合わせ
国際交流基金ベトナム日本文化交流センター 担当:吉岡
TEL +84-(0)123-384-4138(携帯) E-mail norihiko_yoshioka@jpf.org.vn